高校生のときの話だ。
その日はいつもと変わらない日常の一コマのはずだった。
確か4限目の現国の授業だ。
担当の教師がおらず自習となった。
もちろん自習とは名ばかりの空き時間。
その頃の高校生なんて食欲魔神だ。
既に持参した弁当はたいらげている。
次の昼休みには食堂へ行って、からあげうどんを注文する気でまんまんだ。
だから、授業が終わるのをいまかいまかと待ちながら雑談に耽っていた。
そんなときである。
ふ、と前の席に座っている前畑さん(仮名)が振り返った。
「ねぇいま何時? 時計壊れちゃってわかんないんだよね」
教室の時計は修理中だ。
で、雑談していた連中が腕時計を見て、教えてあげる。
「いまは12時10分だよ」
「そかそか。ありがと」
授業の終わりが12時25分である。
あと15分で飯にありつける。
まぁ他の教室との兼ね合いもあるが5分前に教室をでることができればいい。
食堂にはいちばんのりできる。
ということは。
あと、10分か。
そう思いながらまた雑談に戻っていく。
しばらくして前畑さんが振り返った。
「そろそろ授業も終わるかな?」
そうだな。
そんな時間だろうと時計を見た。
「?」
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